経済学概論

経済学では、人々は限られた収入の中で購入可能な組み合わせの中から最も大きい効用を得られるものを選択すると仮定する。本レポートでは、ともに代替財であるコーヒーとワインの消費の組み合わせについて考える。

まず、人々の消費に存在するそれぞれの予算の制約についてグラフで表したものが予算制約線である(1)。縦軸はワインの購入量、横軸はコーヒーの購入量を、直線上の点はその予算で購入可能なこれら2つの財の様々な組み合わせを表している。予算制約線の傾きは2つの財の市場での価格の比率である。

また、消費によって得られる最大の効用について考える上で、人々は日常の経済活動においてより好ましいものから順次選択すると仮定する。つまり、どちらの組み合わせがより効用が大きいのかを具体的に想定するのではなく、それぞれの組み合わせでの好ましさに順序を付けて判断するということである。この効用を序数的効用と呼ぶ。

この序数的効用理論は無差別曲線によって説明される。個人にとって同じ効用水準をもたらす組み合わせは互いに無差別で、このような無差別な組み合わせを結んだものが無差別曲線である。無差別曲線は右下がりで、原点に対して凸型をしており、互いに交わることはない。原点から離れるほど、無差別曲線が示す効用水準は高くなる。

また、無差別曲線上のワインの減少量とコーヒーの増加量の比率は限界代替率と呼ばれ、同じ効用水準を維持するための個人の主観的な交換比率を示す。(2)の点Aと点Bに注目すると、点Bを限りなく点Aに近づけたときの点Aにおける無差別曲線の接線の傾きが限界代替率である。

また、(1)と(2)をまとめたものが(3)である。予算の制約は予算制約線と両軸で囲まれた直角三角形で表され、効用はそれぞれの無差別曲線で示されている。(3)の予算線上に位置するa.b.cの3点に注目すると、予算制約を満たしながら最大の効用をもたらすのは点cである。点cでは無差別曲線が互いに接しており、その傾きは一致している。

このように、無差別曲線と予算制約線が接するようなコーヒーとワインの組み合わせを購入するとき、消費者均衡の状態にあるという。つまり点cが予算制約の下で最大の効用をもたらす最適消費量であり、主観的な財の交換比率と市場での交換比率が一致することを示す。

次に、予算制約線が変化したときの消費行動について述べる。コーヒーやワインの価格もしくは、個人の予算が変わると予算制約線は変化する。例えば、コーヒーの価格の変化は横軸の切片を変化させ、予算の変化は両軸の切片を変化させる。(4)はコーヒーの価格が低下したときの予算制約線の変化を示したものである。

4)を見るともとの予算制約線ではPを選択ていたが、コーヒーの価格の低下によって新し予算制約線と無差別曲線が接する新しい消費者均衡点Rに移行することが示されている。点Pから点Rへの変化は価格効果と呼ばれ、この価格効果は代替効果と所得効果に分類することができる。

4)の破線はもとの予算線に均衡点を持つ無差別曲線上に新い価格比率で接線を引いたものである。この場合、最初の均衡点Pから新しい均衡点Qまでのコーヒーの需要量への変化の影響が代替効果、点Qから点Rへの変化の影響が所得効果である。

代替効果においては、常に価格の低下した財の需要量は増加する。一方、所得効果はいくつかのケースに分けられる。ある財が上級財の場合、の価格低下は所得を上昇させて消費を増加させるため、Rは点Qの右側に位置する。つまり、ある財が上級財のとき、その価格が低下すると確実に消費は増加する。

次にある財が劣等財の場合を考える。劣等財は、所得の増加とともに消費が減少する財のことである。コーヒーが劣等財だとすると、価格が低下すると所得効果によってその消費は減少しRは点Qの左に位置することとなる。このとき、点Rが点Pの左右どちらに位置するかで2つのケースに分けられる。

右に位置するときには、代替効果と所得効果を合わせた価格効果はプラスとなって、コーヒーの価格の低下は需要量を増加させる。しかし、極端な劣等財の場合には点Rは点Qの左に位置し、代替効果の増加分を上回る所得効果により価格効果はマイナスとなるためコーヒーの需要量は減少する。このように価格が低下したときに需要が減少する現象をギッフェンの逆接と呼び、またそのような財をギッフェン財という。

 

参考文献  入門経済学 藪下史郎他 p2359 有斐閣 2013/12/10